キックボクシング初心者は春日俊彰のK-1挑戦動画を見ると試合や練習への取り組みが変わるかもしれない

2019年6月16日

キックボクシングの初心者が、試合を想定して練習する場合、いったい何から手を付けるべきか、途方に暮れるかもしれません。

私もキックボクシング始めて2年になりますが、アマチュアで1回試合に出ました。格闘技観戦歴は長かったので、動き方とか試合の進め方とか、なんとなく知っているつもりでした。でも、いざとなると動けないんですよね。試合やマススパーリングでは思っていたことの半分もできないんです。

なによりまず「怖い」んですよね。日本人ってプロでも、間合い詰められて打ち込まれると結構慌てます。ていうか、慌てないのはタイ人くらいかも。

何かを参考にしたいという思いから、YouTubeでプロの試合を見まくったりしたのですが、プロの選手は判断が早く正確で、同じことを自分ができるかというと「ちょっと無理だな〜」というのが正直なところ。

たとえばゲーオ・ウィラサクレックの美しい左ミドルを見て、「あんなキックが打てたらやってて楽しいだろうな」とか思うわけですが、まあ現実にはできないですよね。

そんなときに、YouTubeで春日俊彰のK-1に挑戦したときの動画を見て、逆の意味で参考になったので、備忘録的にそれを記しておこうと思います。春日の拙い試合運びを見ると、「あ、これやっちゃいけないんだな」というポイントがすごくリアルにわかるんです。

アマチュアレベルでは、技を磨いて「やれることを増やす」のと同時に、「やっちゃいけないことをやらない」という癖をつけるのが重要なんだなと。そういう意味では非常に参考になる動画です。

そもそもなぜ春日俊彰はK-1に出場したのか

いまでこそオードリー春日俊彰=肉体派というイメージがありますが、この動画の当時2007年はまだM-1で準優勝する前で、ほとんど知名度もなかったことから、春日の参戦は売名行為と批判もあったようです。

参戦の経緯はこちら(http://littleboy.hatenablog.com/entry/20090131/p1)やこちら(http://numbers2007.blog123.fc2.com/blog-entry-5520.html)に詳しいです。事務所主導でセッティングがされたもののようですが、売れてなくて、「ダメな自分を変えたい」みたいな気持ちもあったのでしょう。迷走していたのかもしれません。

オードリーは翌年の2008年にM-1で準優勝をしてからいわゆる「売れっ子」になるわけですが、春日のこの経験が間接的に役に立ったというような意味の発言もしているようです。

レベル差ありすぎ!見ていてヒヤヒヤする危険な試合

まず、この試合を見たとき、レベル差がありすぎて「ウソだろw」と思いました。非常に危ないです。春日はいまでこそ、さまざまなスポーツに精通しているイメージがありますが、この時点での動きは素人そのもの。一方で相手はプロレベルです。

それだけでも危ないのに、体重もお互いミドル級くらいはあって一発が重いですから、パンチやヒザが変な入り方をしたら、下手すると脳に影響が出ますよね、これ。本人が希望したこととはいえ、やらせちゃダメだろと思います。

K-1の人気が下降気味になってきて話題性を重視していた当時の時代背景と、売れて無くて迷走中の春日の両者の思惑が一致したんでしょうが、万が一の事態になったらどうするつもりだったんでしょうかね。

ただ、春日のディフェンスとスタミナは本当にスゴいです。実戦経験ほとんどなしで、相手プロなのによくぞ最後まで立っていたなと。学生時代にアメフトで鍛えていたのはダテじゃないです。

もしかしたら、コーチに「相手はプロだから、ガードしっかりしてないと下手したら死ぬぞ」くらい言われていたのかもしれません。それくらい徹底しています。

お互いに距離を取る試合展開

春日の体型ってどう見てもハードパンチャーの体型です。キックは全然練習していないのか、メチャクチャ下手です。だからこの試合の戦略としては、パンチが当たる距離まで間合いを詰めたほうがいい。

でも、相手とのレベル差がありすぎて近づけない。キックボクシング初心者あるあるなんですけど、どうしても恐怖心から必要以上に距離を取ってしまうんですね。

で、相手の中国人選手は春日とのレベル差は認識しているんですけど、いやレベル差があるからこそ「きれいに勝ちたい」みたいなマインドになっていると推察されます。また、レベル差があるとはいえ、春日のしっかりとした体幹を見て、「万が一にも一発喰らったらまずい。このレベルの相手に負けたら大恥」みたいな考えに至ったとしても不思議ではありません。

そんな両者の思惑から、距離を取って手数の少ない試合展開になります。

キックボクシングにおける定石「左ミドル」がなぜ重要なのかがわかる

実戦的なキックボクシングのトレーニングでは、「左ミドル」の重要性をコーチから教えられることがあると思います。

でも「左ミドル」はなぜ重要なんでしょう? 右利きなら「右ミドル」の方が出しやすくないですか?

こういう定石について、ひとつひとつ「なぜだろう」と考えて頭と体で理解していくことで、試合でしっかりと駆け引きや正しい判断ができるようになっていくのだと思います。

まず、一般論では左ミドルは相手のレバー(肝臓)、つまり相手にとっての体の右側に届くからだと言われています。ジムで会長にお腹の左側と右側を交互に叩かれて、「ほら、痛みが違うでしょ」と言われたときの驚きと納得感はいまも忘れられません。

加えて、左ミドルは相手の前進を止められるという有用性があります。オーソドックス(右利き)vsオーソドックス(右利き)の場合ですけど。右利きだったら、右ミドルの方が威力はあるのですが、相手の背中に打ち込む形になるので、効かないんですよね。また、打ち終わりに体が開いてしまうので、そこを狙われてしまうというデメリットもあります。

実際、春日もそれを狙われています。距離の離れた相手に何度も右ミドルを打っては打ち終わりの不安定な態勢でパンチを喰らうというw

だから、春日は距離を取るのなら左ミドルで様子をうかがう戦術がよかった。欲を言えば2種類の左ミドルを打てればよかったんですよね。相手の様子をうかがうだけのフェイントに近い左ミドルと、相手の前進を止めるためにフォロースルーして思いっきり打ち込む左ミドルを。

で、威力もあって出しやすい右ミドルは相手を追い込んで、相手の体が開いたところで仕上げに使うみたいなイメージならカウンターは喰らわなかったと思います。

打ち終わりが不安定にならないのなら、感覚的に出しやすい右ミドルで攻めるのもナシではないでしょう。相手の左ジャブに合わせて出せるくらい状況が見えていれば、心理戦でも有利に働くと思います。ただ、この時の春日の状況ではちょっと厳しいでしょう。

試合になると頭が真っ白になる問題を解決する基本の動き

これも初心者あるあるなんですけど、試合ってやっぱり特別な空間で、知らない人もたくさん見ているからコーチから言われていたこととか、さんざん練習したことがリングに上った瞬間に吹っ飛んじゃうことってあるんですよ。仕方ないですよね、これは。

春日も体力があるとはいえ、初心者なのに場違いなほどの大観衆の前でリングに上げられて、頭が真っ白になったと思います。もっと言えば、最初の数秒で相手との実力差を感じて、「やっべー」と思ったに違いありません。

でも、そんなときでも自然と出てくる、最低限のムーブだけは体で覚えておいたら、もう少し試合らしくなったのかなとは思います。

最低限のムーブっていうのは、いわゆる「ワンツーロー」みたいなことです。ワン(左ジャブ)、ツー(右ストレート)、ロー(右ローキック)は伝統的なコンビネーションとして、世界の至るところで教えられていると思うのですが、基本中の基本だけあって、シンプルだけど有用性があると思います。

ひとつには攻撃的に前へ出ていくことができるから、そしてもうひとつは相手に掴まれにくいというディフェンス的な意味でも優れています。また、ミドルキックと違って、連打しても体力消費が抑えられるという意味でも初心者向きだと思います。

センスがある人だとワンツーローを基本に、ローが警戒されるとローに行くと見せかけて左のボディーフックに切り替えて相手を惑わせたりとか、自然とできるようになっていきます。

試合中、どうしていいかわからなくなったらワンツーローに戻るっていうオプションは、一見不器用ですが、試合でパニクったときを想定したうえでリスク少なく攻撃的に行ける実戦的なテクニックなのでしょう。

結論:キックボクシング初心者は左ミドルとワンツーローを徹底的に鍛えるべし

左ミドルとワンツーロー。ものすごく当たり前の結論で申し訳ない気がするんですけど、これが定石なんですよね。遠目の間合いでは左ミドル、前に行くときはワンツーロー。

最後に春日の挑戦を、安全面から、どちらかというと否定的に書いたような感じになってしまいましたが、攻撃が下手なだけでスタミナとディフェンスはすごく徹底していて、相手のレベルを考えたら最後までリングに立っていただけでも驚異的だと思います。

相手が少し手を抜いてるというか、空気読み気味なのもあるんですけど、それでも春日のスタミナはすごくて、攻撃のレベルが低いのに「何者なんだ、コイツ」と、相手が驚いている様子が伺えるんですよね。これで攻撃が形になってきたら、相当強い選手になると思います。

春日がいま「体育会TV」なんかで、さまざまなスポーツに挑戦しているのを見ていると、基本的な骨格とか筋力の質がものすごくいい。一方で、器用なタイプではないと思います。フィジカルを全面に出して戦っていくタイプかなと。不器用だからこそ、初心者にとって参考になるのだと思います。